2026年 冬季パラリンピックの競技
パラクロスカントリースキー(英語:Para cross-country skiing)は、スキー・スノーボードに分類される冬の競技です。主な種目はスプリント、距離競走、混合リレー、オープンリレー。試合の形式はインターバル、パシュート、パラマススタート、チームスプリント(大会別)があります。
距離・走法・競技クラスを別軸で管理する。
パラクロスカントリースキーはどんな競技か
パラクロスカントリースキーは、体や目に障害のある選手が、上り坂・下り坂・平地のあるコースをスキーで走り、タイムを競う競技です。「雪上のマラソン」とも呼ばれる、持久力の勝負です。
冬季パラリンピックでは、1976年のエーンシェルツビーク大会(スウェーデン)から行われている、最も古い競技の1つです。選手は「立位」「座位」「視覚障害」の3つのカテゴリーに分かれて競います。いまは国際スキー・スノーボード連盟(FIS)が国際大会を運営しています。同じ選手がライフル射撃を組み合わせた「パラバイアスロン」にも出ることが多く、2つを合わせて「パラノルディックスキー」と呼びます。
種目とルール
2026年のミラノ・コルティナ大会では、男女それぞれスプリント・10km・20kmの3種目をカテゴリーごとに行い、さらにリレー2種目を加えて、合わせて20の金メダルがありました。
| 種目 | どんな種目か |
|---|---|
| スプリント | 短い距離を走る。予選の後、数人ずつで競う準決勝・決勝を行う |
| 10km | 立位・視覚障害はクラシカル走法で走る |
| 20km | 立位・視覚障害はフリー走法の長い距離。持久力が問われる |
| リレー | 4人で2.5kmずつつなぐ。カテゴリーの違う選手が1チームになって走る(オープンと混合の2種目) |
走り方には2つあります。「クラシカル」は、雪に掘られた2本の溝(シュプール)に沿って、スキーを前後に動かして進む走り方です。「フリー」は、スケートのようにスキーを斜めに蹴り出して進む走り方で、クラシカルより速く進めます。座位の選手は、座ったまま両腕のストックで雪を押して進むので、走り方の区別はありません。
クラス分け
選手は、障害の種類と重さによってクラスに分けられます。クラスの記号のLWは、英語で「冬の運動機能の障害」を表す言葉の頭文字です。
| カテゴリー | クラス | どんな選手か(目安) |
|---|---|---|
| 立位 | LW2 | 片脚のひざから上に障害がある。スキー2本とストック2本で走る。義足を使える |
| 立位 | LW3 | 両脚に障害がある |
| 立位 | LW4 | 片脚のひざから下に障害がある |
| 立位 | LW5/7 | 両腕に障害がある。ストックを持たずに走る |
| 立位 | LW6 | 片腕のひじから上に障害がある。ストックは1本 |
| 立位 | LW8 | 片腕のひじから下に障害がある。ストックは1本 |
| 立位 | LW9 | 腕と脚の両方に障害がある |
| 座位 | LW10・LW10.5 | 体幹と脚に障害がある。腕の力で「シットスキー」を進める |
| 座位 | LW11・LW11.5・LW12 | 脚に障害があるが、体幹がある程度使える。体幹の力も使ってストックを押す |
| 視覚障害 | NS1 | 全く見えない、または光が分かる程度。目を覆うゴーグルを付け、前を走るガイドの声に従って走る |
| 視覚障害 | NS2 | とても見えにくい。ガイドと走るかを選べる |
| 視覚障害 | NS3 | 見えにくい(視力や見える範囲に障害)。ガイドと走るかを選べる |
視覚障害のクラスは、2024年7月に新しい区分に変わり、以前のB1〜B3から、NS1〜NS3という名前になりました。NSはノルディックスキーの意味です。LW2〜LW4の選手は、立位か座位のどちらか一方を選んで出場します。
計算タイム(係数)のしくみ
同じカテゴリーの中にも、障害の重さが違う選手がいます。そこで、クラスごとに決められた「係数」(パーセンテージ)を、実際に走ったタイムにかけて「計算タイム」を出し、これで順位を決めます。障害が重いクラスほど係数が小さく、タイムが短く計算されます。
たとえば、仮の数字で考えてみます。係数100%のクラスの選手Aが100秒、係数85%のクラスの選手Bが115秒で走ったとします。Aの計算タイムは100秒、Bは115×0.85=97.75秒です。実際のゴールはAのほうが速くても、順位はBが上になります。
そのため、中継の画面では「実際のタイム」と「計算タイム」が並んで出ることがあります。順位を決めるのは計算タイムのほうです。係数は、大会の結果のデータをもとに、国際競技団体が定期的に見直しています。
見どころ・観戦のポイント
上り坂の苦しさ
勝負を分けるのは、上り坂です。片腕でストックを使う選手、ストックを持たない選手、座ったまま腕だけで上る選手が、それぞれの方法で坂を上ります。息を切らしながら上る姿は、この競技の最大の見どころです。
ガイドとの二人三脚
視覚障害のクラスでは、ガイドが選手のすぐ前を走り、「右カーブ」「下り」などと声で伝えます。ガイドも選手と同じくらいの速さで走れる力が必要です。
リレーのチーム編成
リレーは、立位・座位・視覚障害の選手が1つのチームで走ります。国ごとの選手層の厚さが分かる種目です。
日本の主な選手
川除大輝(日立ソリューションズ)は、立位の男子のエースです。両腕に障害がある選手のクラスLW5/7で、ストックを持たずに走ります。2022年の北京大会では、男子20kmクラシカル立位で金メダルを取りました。
新田佳浩(日立ソリューションズ)は、1998年の長野大会から出場を続ける大ベテランです。2010年バンクーバー大会では2つの金メダル、2018年平昌大会でも金メダルを取りました。女子では阿部友里香(日立ソリューションズ)が立位で長く代表を務めています。ほかに佐藤圭一、岩本啓吾、出来島桃子、岩本美歌、視覚障害の松土琴葉、座位の源貴晴・森宏明らが、2026年の代表に入りました。
2026年ミラノ・コルティナ・パラリンピックの結果
クロスカントリースキーは、イタリアのテーゼロ(ヴァル・ディ・フィエンメ)で行われました。日本はこの競技でメダルに届きませんでしたが、入賞が続きました。3月11日の10kmクラシカルの日本選手の結果は次のとおりです。
| カテゴリー | 選手 | 順位 |
|---|---|---|
| 男子立位 | 川除大輝 | 4位 |
| 男子立位 | 新田佳浩 | 7位 |
| 男子立位 | 岩本啓吾 | 19位 |
| 女子立位 | 阿部友里香 | 4位 |
| 女子立位 | 岩本美歌 | 7位 |
| 女子立位 | 出来島桃子 | 9位 |
| 女子視覚障害 | 松土琴葉 | 10位 |
| 男子座位 | 源貴晴 | 18位 |
| 男子座位 | 森宏明 | 22位 |
川除と阿部は、いずれもメダルまであと1つの4位でした。北京大会に続く連覇を目指した川除にとっては、悔しい結果になりました。
2026-27シーズンの見どころ
FISパラクロスカントリースキーのワールドカップは、12月にフィンランドのヴォカッティで始まります。1月にポーランドのシュクラルスカ・ポレンバ、2月にイタリアのトブラッハ、3月にノルウェーのベイトストーレンと続きます。
日本では、まだ若い川除が次の2030年大会に向けてどう巻き返すか、そして新田・阿部らベテランの今後に注目が集まります。視覚障害や座位の若い選手が、ワールドカップで経験を積めるかも見どころです。
よくある質問
Q. パラバイアスロンとの違いは?
A. パラバイアスロンは、クロスカントリーの途中に射撃を行う競技です。視覚障害の選手は、音で的の中心が分かる特別な銃を使います。
Q. 座位の選手はどうやって進むのですか?
A. スキーの付いた座席(シットスキー)に座り、両腕のストックで雪を押して進みます。上り坂も腕の力だけで上ります。
Q. 順位は実際のゴールの順番ですか?
A. クラスの係数をかけた計算タイムで順位が決まります。そのため、ゴールの順番と順位が違うことがあります。
Q. ガイドはどんな人がなりますか?
A. 選手と同じくらいの速さで走れるスキーの経験者がなります。日本でも、元選手などがガイドを務めています。
解説の出典
- 北海道新聞「岩本美7位 ノルディック距離10キロクラシカル ミラノ・コルティナ冬季パラリンピック」
- 日立ソリューションズ ニュース(2026年2月10日)パラリンピック日本代表の選出
- パラスポ+!北京2022パラリンピック速報(川除大輝の金メダル)
- Paralympics Australia: Para cross country skiing Information Sheet(2026年1月)
- NBC Olympics: Guide to sports, events and classifications(2026年パラリンピック)
- Wikipedia(英語)Japan at the 2026 Winter Paralympics
- 国際スキー・スノーボード連盟(FIS)
パラクロスカントリースキーのこれからの大会
| 日程(現地) | 大会 | 開催地 | 案内 |
|---|---|---|---|
| 12月15日(火)〜18日(金) | FIS パラクロスカントリースキー ワールドカップ 男女 |
ブオカッティ(フィンランド) | 公式の案内 |
| 1月7日(木)〜10日(日) | FIS パラクロスカントリースキー ワールドカップ 男女 |
シクラルスカ・ポレンバ(ヤクシツェ)(ポーランド) | 公式の案内 |
| 1月27日(水)〜31日(日) | FIS パラクロスカントリースキー 世界選手権 男女 |
フィンスタウ(ドイツ) | 公式の案内 |
| 2月17日(水)〜21日(日) | FIS パラクロスカントリースキー ワールドカップ 男女 |
トブラッハ(イタリア) | 公式の案内 |
| 3月2日(火)〜6日(土) | FIS パラクロスカントリースキー ワールドカップ 男女 |
ベイトストーレン(ノルウェー) | 公式の案内 |
パラクロスカントリースキーの最近の結果
| 日付(現地) | 大会 | 上位(表彰台) | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2月1日(日) | FIS パラクロスカントリースキー W杯 男子 10kmマススタート クラシカル 座位 | 1位 ジュゼッペ・ロメレ(イタリア) 2位 パブロ・バル(ウクライナ) 3位 ジョシュア・スウィーニー(米国) |
公式結果 |
| 2月1日(日) | FIS パラクロスカントリースキー W杯 男子 10kmマススタート クラシカル 立位 | 1位 セバスティアン・マールブルガー(ドイツ) 2位 ビトルト・スクピエン(ポーランド) 3位 マクシミリアン・ワイドナー(ドイツ) |
公式結果 |
| 2月1日(日) | FIS パラクロスカントリースキー W杯 女子 10kmマススタート クラシカル 立位 | 1位 シドニー・ピーターソン(米国) 2位 カトリン・マルシャン(ドイツ) 3位 ダニエル・アラビッチ(米国) |
公式結果 |
スキー・スノーボードのほかの競技
アルペンスキー・クロスカントリースキー・スキージャンプ・ノルディック複合・フリースタイルスキー/フリースキー・スノーボード・山岳スキー(スキーモ)・テレマークスキー・スピードスキー・フリーライド(スキー・スノーボード)・スキー技術選・基礎スキー競技・スキーボブ・スノースクート・パラアルペンスキー・パラスノーボード・スノースケート・スノーモト・モノスキー(一般・立位)・スノーボード技術選・スキーバイク(協会別の形式)・スコール/スクワル
出典
競技の情報の確認日:2026-10-16・大会の情報の確認日:2026-10-17。日程は開催地の日付です。変更があるため、出かける前・見る前に公式の案内をご確認ください。