2026年 冬季五輪の競技
山岳スキー(スキーモ)(英語:Ski mountaineering / Skimo)(別の呼び方:スキーモ・山スキー)は、スキー・スノーボードに分類される冬の競技です。主な種目はスプリント、混合リレー、インディビジュアル、バーティカル、チーム。試合の形式は個人、リレー、チームレースがあります。
登山全般やバックカントリー滑走と、競技規程のあるレースを区別。
2026五輪初採用。競技自体が2026年に生まれたわけではない。
山岳スキー(スキーモ)はどんな競技か
山岳スキーは、雪の山を自分の足で登り、スキーで滑り降りる速さを競う競技です。英語ではスキーマウンテニアリングといい、縮めて「スキーモ」とも呼ばれます。2026年のミラノ・コルティナ五輪で初めて五輪の正式な競技になりました。この大会で新しく加わった競技は、山岳スキーだけです。
登るときは、スキー板の裏に「シール」という毛足のある滑り止めを貼ります。シールのおかげで、板が後ろに滑らずに斜面を登れます。急すぎる場所では板を外してリュックに付け、ブーツで歩いて登ります。頂上に着いたらシールをはがし、板を下り用に切り替えて一気に滑り降ります。登る力、滑る技術、そして道具を素早く切り替える器用さの3つが求められる競技です。
どのように生まれたか
山岳スキーのもとは、アルプスの山岳地帯で、冬に山を越えて移動したり、山岳兵が訓練したりしたことにあります。レースとしての歴史も長く、イタリアの「メッツァラマ杯」は1933年に始まりました。スイス軍が始めた「パトルイユ・デ・グラシエ」(1943年〜)、フランスの「ピエラ・メンタ」(1986年〜)も、いまも続く伝統の大会です。どれも何時間もかけて高い山を越える、とても過酷なレースです。
世界の大会をまとめているのは、2008年に発足した国際山岳スキー連盟(ISMF)です。2020年にスイスのローザンヌで開かれたユース五輪(若い選手の五輪)で実施され、その後、2026年大会での採用が決まりました。
種目のちがい
| 種目 | 内容 | かかる時間の目安 |
|---|---|---|
| スプリント | 短いコースで、登り・担いで歩く区間・滑りを1回ずつ行う。数人ずつ同時に走る勝ち抜き戦 | 上位選手で約3分 |
| 混合リレー | 男女1人ずつのチーム。交代しながら2周ずつ走る | 五輪の優勝チームで約27分 |
| インディビジュアル | 何度も登って滑る長いコース。山の総合力が試される | W杯の上位選手で1時間半ほど |
| バーティカル | 登りだけのレース。滑りはない | W杯の上位選手で20分台 |
| チーム | 2人1組で長い山岳コースを走る | 大会による |
| ロングディスタンス | さらに長い距離と標高差を走る | 大会による |
五輪で行われたのは、このうちスプリントと混合リレーの2つです。どちらも観客が見やすい、コンパクトなコースで行われます。インディビジュアルやバーティカルは、W杯や世界選手権で行われています。
スプリントのくわしい流れ
スプリントは山岳スキーの中でいちばん短い種目です。コースの標高差は最大でも70メートルほどしかありません。それでも、中身は山岳スキーのすべてが詰まっています。
- スタートすると、シールを貼った板で斜面を一気に登ります。
- 途中で板を外し、背負って階段や急な坂を走って登ります。
- もう一度板をはき、頂上近くでシールをはがして下りの準備をします。
- 旗門のある斜面を滑り降り、ゴールします。
板を外す、背負う、はき直す、シールをはがす、といった切り替えを「トランジション」と呼びます。ここで1秒、2秒の差がつくので、選手は何度も練習して動きを体に覚えさせています。数人が同時に走る勝ち抜き戦なので、前の選手を抜くタイミングや、切り替えでの駆け引きも見どころです。
混合リレーのくわしい流れ
混合リレーは、男子1人と女子1人の2人で1チームを作ります。女子が先に走り、女子、男子、女子、男子の順に交代します。1人が2回ずつ走る計算です。1周の中には登りが2回(そのうち1回は板を担いで歩く区間つき)と、下りが2回入っています。1周を終えた選手が次の選手にタッチして交代し、合計タイムがいちばん速いチームが勝ちです。男女の力をどう組み合わせるかが勝負の分かれ目になります。
用具と安全
- 板とビンディング: とても軽い板を使います。ビンディング(靴を板に留める金具)は、登るときはかかとが上がり、滑るときは固定できる作りです。
- ブーツ: 歩くときは足首が動き、滑るときはしっかり固定できる、軽いブーツを使います。
- シール: 登りの滑り止めです。はがしたシールは服の中などにしまって次に備えます。
- 安全の道具: 山を長く走るレースでは、雪崩に巻き込まれたときに居場所を知らせる機械(ビーコン)や、スコップ、雪に刺して人を探す棒(ゾンデ)を持って走る決まりがあります。
道具の決まりや、切り替えの場所の使い方には細かいルールがあり、違反するとタイムが加算されることがあります。
初めて見る人のための観戦ポイント
- 登りの速さ: 板をはいたまま急な斜面を、走るような速さで登っていきます。持久力の強さがそのまま出る場面です。
- 切り替えの手さばき: 一流の選手は、立ったまま数秒でシールをはがします。少しのもたつきで順位が入れ替わります。
- 下りでの逆転: 登りで遅れても、滑りの上手な選手は下りで追い上げます。
- リレーは交代に注目: タッチの瞬間に、待っている選手がどれだけ素早く飛び出せるかもポイントです。
2026年ミラノ・コルティナ五輪の結果
五輪の山岳スキーは、イタリアのボルミオにあるステルヴィオ・スキーセンターで行われました。2月19日に男女のスプリント、2月21日に混合リレーがありました。スプリントには男女それぞれ18人が出場し、男女とも前の年の世界選手権で優勝した選手が金メダルを取りました。
| 種目 | 金 | 銀 | 銅 |
|---|---|---|---|
| 男子スプリント | オリオル・カルドナコル(スペイン)2分34秒03 | ニキータ・フィリポフ(個人の中立選手) | ティボー・アンセルメ(フランス) |
| 女子スプリント | マリアンヌ・ファットン(スイス)2分59秒77 | エミリー・アロップ(フランス) | アナ・アロンソ(スペイン) |
| 混合リレー | フランス(アロップ、アンセルメ)26分57秒44 | スイス(ファットン、キストラー) | スペイン(アロンソ、カルドナコル) |
男子スプリントで銀メダルを取ったフィリポフは、ロシア出身で「個人の中立選手」として出場しました。この大会で中立選手が取った最初のメダルになりました。混合リレーでは、スプリントで銀と銅だったフランスの2人が組んで金メダルを取りました。
日本の山岳スキー
日本は、2026年五輪の山岳スキーの出場枠を取ることができませんでした。出場できたのは、欧州の国を中心に限られた国と地域だけでした。出場枠は1か国につき男女2人ずつまでで、全体でも男女18人ずつしかありません。日本は、出場枠を決めるランキングで枠の届く順位に入れませんでした。
国内では、日本山岳・スポーツクライミング協会(旧・日本山岳協会)が山岳スキーの競技をまとめていて、山岳スキー競技の日本選手権も開かれています。日本選手権の個人レースでは、若手の島徳太郎選手がベテランとの接戦を制して優勝した回もあります。日本は雪が多く、山も身近にあるので、これから競技人口が増える余地が大きい競技です。
2026-27シーズンの見どころ
五輪で一気に注目が集まった山岳スキーは、2026-27シーズンもISMFのW杯が欧州を中心に開かれます。2027年3月にはアゼルバイジャンのシャフダグで世界選手権、4月にはノルウェーのロムスダールで長い距離の世界選手権が予定されています。五輪の金メダリストであるカルドナコルやファットンが、スプリント以外の種目でも強さを見せるかが注目です。
よくある質問
山スキーやバックカントリーとは違うのですか?
雪山を登って滑るという点は同じです。ただ、山岳スキーの競技は、決められたコースと規則のもとでタイムを競います。自由に山を楽しむ山スキーやバックカントリー滑走とは分けて考えます。
なぜスプリントは短いのですか?
観客が近くで見られ、テレビでも分かりやすいように作られた種目だからです。長い山岳レースの魅力を、約3分に詰め込んだ形です。
雪崩の危険はないのですか?
大会では、主催者が安全なコースを選び、天気や雪の状態によってコースを短くしたり変えたりします。長いレースでは、選手も雪崩用の安全道具を持って走ります。
解説の出典
- 国際山岳スキー連盟(ISMF)
- Ski mountaineering at the 2026 Winter Olympics(ウィキペディア英語版)
- What is ski mountaineering at the Olympics?(NBC)
- 新競技「山岳スキー」お披露目 欧州を中心に発展(北海道新聞・共同)
- フィリポフ「特別なこと」と神妙 AINメダル第1号、山岳スキー(北海道新聞・共同)
山岳スキー(スキーモ)のこれからの大会
| 日程(現地) | 大会 | 開催地 | 案内 |
|---|---|---|---|
| 1月9日(土)〜10日(日) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ 男女 |
ボルミオ(イタリア) | 公式の案内 |
| 1月14日(木)〜16日(土) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ 男女 |
クーシュベル(フランス) | 公式の案内 |
| 1月23日(土)〜24日(日) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ 男女 |
アリンサル(ラ・マサナ)(アンドラ) | 公式の案内 |
| 1月30日(土)〜31日(日) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ 男女 |
ボイ・タウル(スペイン) | 公式の案内 |
| 2月20日(土)〜21日(日) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ 男女 |
バル・マルテッロ(イタリア) | 公式の案内 |
| 3月12日(金)〜18日(木) | ISMF 山岳スキー 世界選手権 男女 |
シャーダグ(アゼルバイジャン) | 公式の案内 |
| 3月23日(火)〜25日(木) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ 男女 |
グリンデルワルト(スイス) | 公式の案内 |
| 3月31日(水)〜4月4日(日) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ 男女 |
ビラール・シュル・オロン(スイス) | 公式の案内 |
| 4月10日(土) | ISMF 山岳スキー 世界選手権 男女 |
ロムスダール(ノルウェー) | 公式の案内 |
山岳スキー(スキーモ)の最近の結果
| 日付(現地) | 大会 | 上位(表彰台) | 出典 |
|---|---|---|---|
| 4月4日(土) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ | 1位 エミリー・アロップ(フランス) 2位 マルゴ・ラビネル(フランス) 3位 ジュリア・ムラダ(イタリア) |
公式結果 |
| 4月4日(土) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ | 1位 ヨン・キストラー(スイス) 2位 ティボー・アンセルメ(フランス) 3位 オリオル・カルドナコル(スペイン) |
公式結果 |
| 4月2日(木) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ | 1位 アクセル・ガシェモラレ(フランス) 2位 エミリー・アロップ(フランス) 3位 ヨハンナ・ヒーマー(オーストリア) |
公式結果 |
| 4月2日(木) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ | 1位 レミ・ボネ(スイス) 2位 ウィリアム・ボンマルディオン(フランス) 3位 パウル・フェルブニャク(オーストリア) |
公式結果 |
| 4月1日(水) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ | 1位 アクセル・ガシェモラレ(フランス) 2位 エミリー・アロップ(フランス) 3位 ヨハンナ・ヒーマー(オーストリア) |
公式結果 |
| 4月1日(水) | ISMF 山岳スキー ワールドカップ | 1位 レミ・ボネ(スイス) 2位 オーレリアン・ゲ(スイス) 3位 パウル・フェルブニャク(オーストリア) |
公式結果 |
スキー・スノーボードのほかの競技
アルペンスキー・クロスカントリースキー・スキージャンプ・ノルディック複合・フリースタイルスキー/フリースキー・スノーボード・テレマークスキー・スピードスキー・フリーライド(スキー・スノーボード)・スキー技術選・基礎スキー競技・スキーボブ・スノースクート・パラアルペンスキー・パラクロスカントリースキー・パラスノーボード・スノースケート・スノーモト・モノスキー(一般・立位)・スノーボード技術選・スキーバイク(協会別の形式)・スコール/スクワル
出典
競技の情報の確認日:2026-10-16・大会の情報の確認日:2026-10-17。日程は開催地の日付です。変更があるため、出かける前・見る前に公式の案内をご確認ください。