2026年 冬季パラリンピックの競技
パラバイアスロン(英語:Para biathlon)は、複合・持久系に分類される冬の競技です。主な種目はスプリント、インディビジュアル、スプリントパシュート、シングル混合リレー(大会別)。
全形式が2026パラ採用とはしない。IBUの独自プログラムを使用。
スプリントパシュート等の新形式を含む。
どんな競技か
パラバイアスロンは、クロスカントリースキーと射撃を組み合わせた競技です。雪の上を滑って体力を使い、射撃場では息を整えて的を狙います。「動く力」と「止まる力」の両方が求められるのが、いちばんの特徴です。
冬季パラリンピックでは、1988年のインスブルック大会で、体に障害のある選手の種目として始まりました。1992年からは、目に障害のある選手も出場できるようになりました。
長いあいだ国際パラリンピック委員会(IPC)が統括してきましたが、2022年に国際スキー・スノーボード連盟(FIS)へ移りました。2024年からは国際バイアスロン連合(IBU)が単独で統括しています。オリンピックのバイアスロンと同じ団体が受け持つようになり、大会の運営や記録の出し方がそろってきました。
2026年のミラノ・コルティナ・パラリンピックでは、イタリア北部のヴァル・ディ・フィエンメにある、テーゼロのクロスカントリー競技場が会場でした。
クラス分け
選手は障害の種類によって、大きく3つのグループに分かれて競います。
| グループ | 主な対象 | 滑り方 |
|---|---|---|
| 立位(スタンディング) | 腕や脚に障害があり、立って滑る選手 | 2本のスキーで滑る。ストックを1本だけ使う選手や、使わない選手もいる |
| 座位(シッティング) | 脚などに障害があり、座って滑る選手 | いすにスキーが付いた「シットスキー」に乗り、両手のストックでこいで進む |
| 視覚障害 | 目が見えない、または見えにくい選手 | 前を滑る「ガイド」の声をたよりに滑る |
同じグループの中にも、障害の重さが違う選手がいます。そこで使われるのが「計算タイム」の仕組みです。クラスごとに決められた割合(係数)を実際のタイムにかけて、その計算後のタイムで順位を決めます。障害が重いクラスほど、実際のタイムが大きく割り引かれる形です。
結果表にある「LW8」「LW12」「NS3」といった記号は、このクラスを表しています。立位はおおむねLW2〜LW9、座位はLW10〜LW12です。視覚障害はかつてB1〜B3と呼ばれていましたが、最近の大会ではNS1〜NS3という記号で表しています。
音で狙う射撃のしくみ(視覚障害クラス)
視覚障害のある選手は、目で的を見ません。音で狙います。
使うのは、赤外線のカメラなどを組み込んだ電子式のライフルです。選手はヘッドホンを付けて構えます。銃口が的の中心に近づくほど、ヘッドホンの音が高くなります。中心をとらえたときが、いちばん高い音です。選手は音の高さの変化を聞き分けて、引き金を引くタイミングを決めます。
このライフルは決まった型にそろえられていて、射撃場に置かれたものを全員が使います。道具の差が出ないようにするためです。
ガイドは射撃場まで選手を導き、構える位置を合わせる手助けをします。ただし、撃つときは黙って見守ります。会場の声援が大きいと音が聞き取りにくくなるため、選手は練習のときから周りの音を流して、集中する訓練をしています。
滑る区間でも、ガイドの役割はとても大きいです。ガイドは選手の前を滑り、マイクとスピーカーで「右に曲がる」「下りに入る」などと伝えます。下り坂では、ガイドのストックを持って方向を合わせることもあります。選手とガイドは一つのチームとして扱われ、メダルを取ればガイドにもメダルが贈られます。
体に障害のある選手の射撃
立位と座位の選手は、空気銃(エアライフル)を使います。的までの距離は10メートルです。1回の射撃で5つの的を撃ちます。
基本は、腹ばいになって撃つ「伏射(ふくしゃ)」です。座位の選手で、障害のために伏せた姿勢がとれない場合は、座ったまま撃つことも認められています。
オリンピックのバイアスロンと大きく違うのは、ライフルを背負って滑らない点です。銃は射撃場に置いておき、コーチが選手の射撃位置まで運びます。体に障害のある選手は、自分に合わせて調整した銃を使います。
種目とルールのくわしい説明
2026年大会では、男女それぞれ、座位・立位・視覚障害の3つのグループで、次の3種目が行われました。合わせて18種目です。
| 種目 | 射撃の回数 | 外したときの罰 |
|---|---|---|
| スプリント | 2回 | 1発外すごとに、ペナルティーループ(罰の周回)を1周 |
| インディビジュアル(個人) | 4回 | 1発外すごとに、タイムに1分を足す |
| スプリント・パシュート | 予選・決勝とも2回 | 1発外すごとに、ペナルティーループを1周 |
コースは1周2〜2.5キロほどで、これを3〜5周します。合計の距離は7.5〜12.5キロです。2026年大会の男子インディビジュアルは12.5キロで行われました。
ペナルティーループの長さは、立位の選手で150メートル、座位の選手で100メートルほどです。射撃場を出てすぐのところにあり、外した数だけ回ってからコースに戻ります。
スプリント・パシュートは、最近加わった新しい形の種目です。まず短い予選を滑り、上位の選手が決勝へ進みます。予選と決勝を同じ日に続けて行うため、速さと射撃の正確さに加えて、短い時間で体を回復させる力も試されます。
順位の決まり方
どの種目も、最後は「計算タイム」がいちばん短い選手が勝ちです。
インディビジュアルは、外した数×1分がそのまま足されます。1発の重みがとても大きい種目です。スプリントとスプリント・パシュートでは、外すと罰の周回を滑る分だけ時間を失います。滑りが速い選手でも、射撃で2〜3発外すと逆転されることがよくあります。反対に、滑りで少し遅れても、全部当てて順位を上げる選手もいます。
見どころ・観戦のポイント
- 射撃場に入る直前。選手はスピードを落とし、呼吸を整えます。急ぎすぎると的を外し、落ち着きすぎると時間を失います。
- 的の結果が出る瞬間。5つ全部当てれば、そのまま次の周へ。外した数だけ罰の周回に入るので、順位の動きがひと目で分かります。
- 視覚障害クラスの射撃場の静けさ。選手が音を聞き分けられるよう、撃つ瞬間は静かに見守るのがマナーです。
- 座位の選手の腕の力。上り坂を両腕だけでこいで上がる姿は迫力があります。
- 計算タイム。速報では、実際のタイムと計算後のタイムの両方が出ることがあります。順位は計算後のタイムで決まります。
日本の主な選手と最近の成績
日本はこれまでに、パラリンピックのバイアスロンでメダルを取っています。2006年トリノ大会では太田渉子選手が銅メダルを獲得しました。2014年ソチ大会では、久保恒造選手が男子7.5キロ座位で銅メダルに輝きました。
2026年のミラノ・コルティナ大会には、男子座位の源貴晴選手、男子立位の佐藤圭一選手、女子立位の阿部友里香選手、男子視覚障害の有安諒平選手(ガイドは藤田佑平選手)の4人が出場しました。4人とも、同じ大会のクロスカントリースキーにも出ています。バイアスロンとクロスカントリーを掛け持ちするのは、日本の選手によくある形です。
| 選手 | クラス | スプリント | インディビジュアル | スプリント・パシュート |
|---|---|---|---|---|
| 源貴晴 | 男子座位 | 24位 | 19位 | 決勝22位 |
| 佐藤圭一 | 男子立位 | 18位 | 18位 | 決勝12位 |
| 阿部友里香 | 女子立位 | 11位 | 出場せず | 予選11位(決勝に進めず) |
| 有安諒平 | 男子視覚障害 | 15位 | 11位 | 出場せず |
日本勢はメダルには届きませんでした。それでも、佐藤選手がスプリント・パシュートの予選で10発すべてを当てるなど、射撃で光る場面もありました。
2026年ミラノ・コルティナ・パラリンピックの結果(世界)
大会は2026年3月6日から15日まで行われ、バイアスロンは3月7日・8日・13日の3日間でした。18種目では、中国とウクライナの選手が多くのメダルを取りました。
女子座位では、アメリカのオクサナ・マスターズ選手がスプリントで、ケンドール・グレッチ選手がスプリント・パシュートで金メダルを取りました。女子立位では、カナダのナタリー・ウィルキー選手がインディビジュアルとスプリント・パシュートの2種目を制しました。男子視覚障害のスプリントは、ウクライナの選手が表彰台を独占しました。
2026-27シーズンの見どころ
パラリンピックの翌シーズンは、次の大会に向けた新しい4年間の始まりです。IBUのパラバイアスロン・ワールドカップは、12月にフィンランドで開幕します。2027年2月には、スロベニアのポクリュカで世界選手権が予定されています。
次のパラリンピックは、2030年のフランス・アルプス大会です。日本にとっては、ベテランの経験を若い選手につなぎ、射撃の精度をどこまで上げられるかが課題になります。
よくある質問
目が見えない選手は、どうやって的を撃つのですか?
電子式のライフルとヘッドホンを使い、音の高さで狙います。銃口が的の中心に近づくほど音が高くなるので、いちばん高い音のところで引き金を引きます。
オリンピックのバイアスロンと、どこが違いますか?
主な違いは3つです。銃を背負って滑らないこと、的までの距離が10メートルで空気銃などを使うこと、そして障害の重さに合わせた「計算タイム」で順位を決めることです。
ガイドもメダルをもらえますか?
はい。視覚障害クラスでは、選手とガイドが一つのチームとして扱われます。メダルを取れば、ガイドにもメダルが贈られます。
日本は2026年大会のバイアスロンでメダルを取りましたか?
取れませんでした。日本選手団全体のメダルは、アルペンスキーとスノーボードでの銀3個・銅1個の計4個でした。
解説の出典
- IBU 公式 About Para Biathlon(歴史・射撃・罰則)
- IPC Milano Cortina 2026 Para biathlon explained(視覚障害クラスの射撃とガイド)
- IBU 公式結果 ミラノ・コルティナ2026 パラリンピック バイアスロン
- 秋田魁新報(共同通信) 小須田は4位、小栗7位 スノーボードクロス(バイアスロン男子12.5キロの日本勢)
- nippon.com ミラノ・コルティナ冬季パラ、日本のメダルは銀3、銅1で計4個
- web Sportiva 久保恒造 ソチ大会バイアスロン銅メダル
パラバイアスロンのこれからの大会
| 日程(現地) | 大会 | 開催地 | 案内 |
|---|---|---|---|
| 12月7日(月)〜12日(土) | IBU パラバイアスロン ワールドカップ 第1戦 男女 |
ブオカッティ(フィンランド) | 公式の案内 |
| 1月18日(月)〜24日(日) | IBU パラバイアスロン ワールドカップ 第2戦 男女 |
マルテル(バル・マルテッロ)(イタリア) | 公式の案内 |
| 2月22日(月)〜28日(日) | IBU パラバイアスロン 世界選手権 男女 |
ポクリュカ(スロベニア) | 公式の案内 |
| 3月8日(月)〜14日(日) | IBU パラバイアスロン ワールドカップ 第3戦 男女 |
トシュビー(スウェーデン) | 公式の案内 |
パラバイアスロンの最近の結果
| 日付(現地) | 大会 | 上位(表彰台) | 出典 |
|---|---|---|---|
| 3月13日(金) | パラリンピック冬季大会 女子スプリントパシュート 座位 決勝 | 1位 ケンドール・グレッチ(米国) 2位 キム・ユンジ(韓国) 3位 アニャ・ビッカー(ドイツ) |
公式結果 |
| 3月13日(金) | パラリンピック冬季大会 男子スプリントパシュート 座位 決勝 | 1位 イェルボル・ハミトフ(カザフスタン) 2位 タラス・ラド(ウクライナ) 3位 劉子旭(中国) |
公式結果 |
| 3月13日(金) | パラリンピック冬季大会 女子スプリントパシュート 立位 決勝 | 1位 ナタリー・ウィルキー(カナダ) 2位 イリーナ・ブイ(ウクライナ) 3位 オレクサンドラ・コノノワ(ウクライナ) |
公式結果 |
| 3月13日(金) | パラリンピック冬季大会 男子スプリントパシュート 立位 決勝 | 1位 蔡佳雲(中国) 2位 フリホリー・ボウチンスキー(ウクライナ) 3位 マルコ・マイヤー(ドイツ) |
公式結果 |
| 3月13日(金) | パラリンピック冬季大会 女子スプリントパシュート 視覚障がい 決勝 | 1位 カリナ・エドリンゲロバ(チェコ) 2位 王躍(中国) 3位 シモナ・ブベニチコバ(チェコ) 3位 レオニー・ワルター(ドイツ) |
公式結果 |
| 3月13日(金) | パラリンピック冬季大会 男子スプリントパシュート 視覚障がい 決勝 | 1位 余爽(中国) 2位 オレクサンドル・カジク(ウクライナ) 3位 アナトリー・コワレフスキー(ウクライナ) |
公式結果 |
複合・持久系のほかの競技
バイアスロン・スキーオリエンテーリング・スキーアーチェリー・ウインタートライアスロン・ウインターデュアスロン・冬季五種競技(マスターズ等)・スノーシュー・バイアスロン・スキー&ゴルフ・パラ冬季トライアスロン/デュアスロン
出典
競技の情報の確認日:2026-10-16・大会の情報の確認日:2026-10-17。日程は開催地の日付です。変更があるため、出かける前・見る前に公式の案内をご確認ください。